mercredi 13 septembre 2006 20:43

しょっぱい、夢

泣きながらパンを食べた者でなければ、人生の本当の味はわからない(ゲーテ)

これを言ったのはヘッセかと勝手に記憶違いしていたけど(だからあんな自家中毒的な小説を書いたのかと思ってた)、ゲーテだったか。
ゲーテとなると、まさか失恋の涙とかじゃないよね? そう思うと価値が半減だから、そうじゃないといいな(わたしは恋愛に価値を見い出せない女…)。

でも、この言葉はものすごく本質をついている。
みなさんはしょっぱいパンの味を知ってますか?
わたしはよく知ってます、しょっぱいパンもしょっぱい米も。
これがまた飲み込めなくて、余計つらいんだよね。
ちなみに関西人は涙も「からい」と言うらしい。マメ知識。

この言葉を思い出したのは、夢のことを考えたからだった。


相変わらず、あの悪夢を見続けている。
ずっと前から見ていた夢だけど、妊娠してからはインターバルが極端に短くなっている。
妊娠がわかってからすぐに見始めて、すでに5回を数えた。

「やっぱり漠然とした不安があるのかな」
だいちゃんは言った。

だいちゃんは知らない。
わたしは言わない。

漠然とはしていない、はっきりなぜ自分がこの夢を見るのか、わたしは知っている。

だいちゃんと一緒に眠るようになってから、それを遠くの方に追いやることで、わたしは睡眠を手に入れた。
ときどき忘れた頃に夢に見ることはあったけど、またもう少し遠くの方に追いやってしまえば済むことだったし。

じゃぁ、なぜ妊娠してから頻繁に見るようになったのか。
それは、核心に触れつつあるからだ。
もうそろそろ、ごまかしがきかなくなってきたってことなんだよ。

きっとわたしは、自ら望んだ妊娠・出産で、向き合わねばならなかったことと対峙するのが、とても嫌なんだ。
嫌だから、ずっと先延ばしにして、大げさなわざとらしいおしゃべりを続けたり、ギュッと目を閉じて耳を塞いだりしてたんだもの。

でもわたしが妊娠すること・出産すること・きっと子供を育てることも、どうしてもその嫌なことにわたしを向き合わせざるをえない現象なんだ。

やっぱり、ちゃんと大人になってから妊娠するべきだったな。
せめてもう少し、処理能力を上げてから挑むべきだった。

でもわたしだけ頑張っても仕方ないの。わたしだけ大人になっても仕方ないの。
向き合おうとするもの自体が、いつまでも進化を遂げてくれないから。
歳をとるのは、わたしばかりだな。

あの夢が醒めたときはいつも、まるでそれまで息をしていなかったように、胸がつまって苦しくて、現実の世界の感触を確かめると、やっと息を吐くことができるの。深く深く。
頭の裏から背中あたりからだんだん恐怖心がやってきて、それは徐々に嫌悪感に変わって、ひどいひどい嫌悪感で、泥水のお風呂に入ってガシガシ全身洗いなおしたいくらいの嫌悪感で。
(本当はもっと残酷な想像をするけど、不適切だろうからやめておく)

漠然と、なんて言うだいちゃんが、ほほえましい。

だいちゃんは知らない。
わたしは言わない。
先生にも言わない。

別にひとりでどうにかしようってわけじゃないけど。
話してもいいっていうルールがないんだ。
もしくは、言っちゃいけないっていうルールが、口に重たくのしかかってて、開かない。

でも、これはいくつもある悪夢のうちのたった一つだし、今になって始まった話でもないし。
だから、
「また今日も夢を見たよ」
「特に変わったことはなかったです」
それで済ませておきたいな、とりあえずあと何ヶ月かは。


だけど、もうしょっぱいパンを食べることはしたくない。
それを飲み込もうとするときは、夢が醒めたときと同じくらい、苦しいの。

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