まず最初に、一回目のゲームに出たあと、突然強烈な腹痛を感じたのです。
この痛みは生理に違いないと思った。だけどトイレに行っても、出血はしていない。
でもだいちゃんと相談して、きっと今から来るんだろうと思ったので、
薬局までグッヅを買いに行ったんです。もうその時点でだるかった。
でも戻ってきてまたトイレに行っても、まだ来ていない。
けど明らかに生理痛はあったので、こんなんじゃ楽しくバスケなんてできない、
と買って来た薬をとにかくすぐ飲んだ。
しばらく休んでると腹痛は消えたし、少しフラフラしたけど、
ちょうど25人揃ったのでわたしが休んだら誰かが代わりに出なきゃいけないし、
できるんなら自分が楽しみにしてたバスケだし、ちゃんと出ようと思った。
出たところで何もできなくても、参加しないよりはマシだと思ったから。

でもだいちゃんは休んだら、と言っていた。
それがだいちゃんなりの優しさだった。それはよくわかってたけど。

案の定、5分ゲームをやったあと、また猛烈に痛くなってきた。
動いて暑くて出てくる汗と、痛くて出てくる冷や汗をふくのでいっぱいいっぱいだった。
だけど、それでもまだ生理は来なかった。

そしてバスケが終わり、食事に行くことになった。
ほんとは早く帰りたかった。でもそれをポロッと口に出したら、
だいちゃんはひどく不機嫌になってしまった。
それからおそばやさんに行くまで、つるたくんもまさとも心配して
いろいろ話しかけてくれてた。
でもだいちゃんは「早く（食事に行く）店を決めろ」とか、
わたしが決められないでいると「嫌って言うなら代案を出せ」とか、
どうしてこんなにイライラして冷たいことを言うんだろう、と思った。
最近ずっと、わたしもだったけど、だいちゃんもすごくイライラしていて、
だけど昨日ホテルでゆっくりできてすごく楽しそうにニコニコしていたから、
あーよかったなーと思ってたのに。
また逆戻りしてしまった。

結局おそばやさんで食事して、久しぶりにつるたくんといろいろ話ができたから、
結果的にはよかったかもしれない。
ただ、つるたくんには全部ちゃんと説明してたからわかってもらえてたけど、
他の人たちにはテンション低い、不機嫌な人に映ってしまってたかもしれない。
ごめんなさい。だけど、だから早く帰りたかったのに。

だいちゃんは「だからバスケ休めばって言ったのに。そんなとこで頑張って、
後でダメなんて意味がないだろ」みたいなことを言った。
びっくりした。
なんで？　バスケをしに来たから体が動くならバスケやろうって参加したのに。
でも今日は具合悪いから早めに帰りますっていうのはダメなの？

結局だいちゃんはみんなと別れたあと、ご飯食べに行くって言い出す前に
すいに聞かなくてごめんね、と言ってくれた。
おそば食べながらよく考えたらしい。
でもその頃にはもう口が重くて開かなくなっていた。

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だいちゃんの言い分。
・すいが具合が悪いから頑張って仕切らなきゃいけない。
・早く帰るためには成城でご飯を食べにいくほうがいい。
こんなことを考えてて、でもいっぺんに二つのことができない人なので、
いっぱいいっぱいになってたらしい。

わたしの言い分。
わたしの言い分は、15年以上も前に遡って始まる。

初めから生理不順で、生理痛もひどい質だった。
でもめんどくさいものと考えていたので、来ない月があっても気にしてなかった。
薬を飲むようになってさらに不順になり、まったく来ない期間もあった。
それでもそんなには気にしてなかった。

ところが20代も後半になって、友だちに子供ができ始めてくると、
自分の体が不完全なような気がして、多少心配し始めた。
そして薬を今のものに変えたら、ちゃんと毎月きちんと来るようになった。
30も目前にして初めて規則正しい体になった。
特別口に出して言うほどでもないけど、ほんとはすごくうれしかったし、安心していた。

なのに、今年の3月からまた乱れ始めた。
4月頭の婦人科検診では、
「あなたは薬を長い間いっぱい飲んでるから、また不順になってきたのかも」と無責任に言われた。
主治医には、「乱れてもちゃんと来てるなら大丈夫」と励まされた。

この3月という時期が、引っ越し前から今に至るまでずっと忙しくて
きちんと休めていない期間が始まった時期、というのと、
薬をほんのちょっとだけ減らした時期、というのと重なっていて、
どっちが原因かははっきりとはわからない。
ただ主治医はその減らした薬があった頃のほうが精神的にも落ち着いていたと診ていて、
最近は頓服としてその薬を出している。
でもわたしは後戻りをするのが嫌で、結局一度も飲んでいない。

そして生理は4月、5月、とどんどんずれ始めて、今月に至っては
1週間も遅れている。そんな状況だった。
しかし環境が変わると来ることが多いので、
ホテルに泊まった晩に来るんじゃないかと思ってた。でも来なかった。
バスケオフにぶつかることも多いので、着替えたあとにトイレで確認したけど、
やっぱり来てなかった。

すっかり安心していたのに、突然痛みだけがやって来た。
ひどい生理痛だけあるのに、生理自体が来ない、という、今までにない状態。
中には生理前に前触れとして生理痛がある人もいるのかもしれないけど、
自分はそうなったことがなかったので、ひどく不安に感じた。

痛みと、どうしてこんな日に限って痛くなるの？　さっきちゃんと確認したのに！　ってのと、
痛いのにどうして生理が来ないの？　ってのと、
ここ最近の胃の痛みも加え、なんか自分の体がおかしい、ってのとで、
いろいろ不安だし、せっかく楽しいバスケオフなのに、とショックだしで、
テンションが下がりまくっていったのです。

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もうそうなると、人と喋るのも笑うのも辛い。
ゲームをやってるのを観てるんだけども、なんか一枚フィルターがあるようで、
自分はここにいるのに、なんだかひどく客観的なの。
感情も頭の回転も鈍くなって、みんなが笑ってる声が遠くの方から聞こえてきてやっと、
あぁ、なんか面白いことがあったんだな、と気づく。サイアクだ。

ほんとはさっちゃんやさえさんには自分で具合悪いことを話そうと思ってた。
でも何となく言いそびれて。
だけどよしくんもコマルも不調を知ってたから、だいちゃんにおそばやさんで
「あんまりみんなに言わないでよー、恥ずかしいでしょー」と冗談ぽく言ったら、
なんか勘違いされてまた怒られた。なんか噛み合ってない。
実際はさっちゃんとさえさんが、わたしが買い物に行ってるあいだに
だいちゃんに聞いたらしいですね。
筒抜けじゃん！　と思ったけど、よしくんもコマルもよくわかってくれてるから、
むしろありがたいくらいです。

さちこもよしくんも優しいしよくわかってくれてるから、
わたしの様子がおかしいと敏感に感じ取っちゃうでしょ。
それがほんとにすごく申し訳ない。
さっちゃんはすぐに「大丈夫？」って言ってくれたし、
よしくんはわたしが早く帰りたいと漏らしたら、
「お腹痛いもんね」と言ってくれた。
よしくん、その気の回り具合をだいちゃんに分けてやってよ…。

バスケもね、ただ生理で休むっていうのも恥ずかしいし、ふがいないし、
具合が悪いところを極端に人に見られたくない、というのもある。
見られたくないし、見られて心配かけるのも嫌だ。
それに普段から「どうしてあの人はちょっとしかゲーム出ないんだろう」
と思われてるかもしれないし、もしかしたらずるいと思ってる人もいるかもしれない。

確かにわたしは毎日会社や学校やバイトとか行ってる人に比べれば、
歩くことすらしてないし、家にいる時間も長いし、寝てる時間ももの凄く長い。
そんだけ寝てれば体力余ってるんじゃないかと思われるかもしれないけど、
実際はまったく逆で、ほぼ気絶に近い状態で眠り続けてるので、
体力はどんどん落ちてゆく一方なのです。
好きであんなに寝てるんじゃないのです。最近それを痛感してる。
ちゃんと起きてればやれることはいっぱいあるのに、と。

だからバスケもあんまり頑張れない。3分半でもすごくしんどい。
だから自分でみそっかす扱いしてる。
それは自分の体が他の人とは違うことを、嫌というほどわかってるから。

でもできれば頑張りたいと思ってるのは確かで。
だからできる時はやる。何もできなくても参加する。
昨日だって痛みが一度治まって、できるなと思ったからゲームに出たのに。
なのにどうしてだいちゃんに怒られなきゃいけなかったんだろう。

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わたしはここ一年でだいぶ調子もよくなって、できることも多くなった。
一人でできるようになったことも。
そしてだいちゃんといるときは「自然に」普通にできるようになった。
それがうれしいし、ずっとそうありたいと思う。
だけどわたしが調子がいいと、だいちゃんはいろいろ忘れてしまうみたいで。
昨日も、薬飲んで治ったからバスケに出て、もう大丈夫なんだと思ったそうだ。
でもなかなか女心は、特にわたしは、そう簡単にはいかない。

一歩外に出ると、わたしの普通さにはまだまだ努力が必要なものなんだと思う。
普通の女の子のかっこしてるのも、きれいにお化粧してるのも、
初対面の人と笑って話すのも、大人しい高校生たちに話しかけるのも。
全部、努力が伴っている。
つるたくんやあんどうさんに比べれば、わたしの努力はわかりにくいものかもしれないけど。

付き合いの長いさっちゃんやよしくん、まさと、コマルにきっとさえさんも、
そしてつるたくんも、よくわかってくれてるんだと思う。
そういう人たちの何気ない優しさにわたしはいつも助けられてる。

でもね、ここ最近で仲良くなった人たちには、きっとわたしは普通の人だと思われてる。
普通の人だと思われてるなら、そう思われたままでいたいよ。
具合が悪いとこなんて見せたくないし、もしそうなりそうなら、
言葉は悪いけど逃げて隠してしまいたいよ。
昨日の食事がまさにそうだった。
だって、何も知らない人たちから見たら、わたしはただの若作りの気分屋さん、
お天気屋さんだと思われてしまうよ。
そうじゃない、そうじゃないの。いろんな背景があるんだよ。
だけど、普通の人だって思われてるなら、そんなこと知ってもらわなくていいよ。

わたしとつるたくんとあんどうさんがデイケアで友だちになったことを
わたしは一度もみんなには話してないけど、
でもさっちゃんもよしくんも、わかってるよね？
だけどそんなこと口に出さずに、関係なしに仲良くなれてるじゃん。
だから、新しく仲良くなった人たちにだって、
そんな余計なこと知ることなしに、みんなで仲良く楽しくバスケしたいよ。

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そんなようなことを、昨晩は涙ながらにだいちゃんに訴えました。
だいちゃんはやっぱり不器用で、空気が読めなくて、気遣いもあまりできない人だから、
よくわかってなかったと、すいが具合がいいと忘れることがある、と
謝ってくれました。

「わたしのことを一番に考えて」なんて、バカみたいなことを言うつもりはないけど、
具合が悪くて不安なときぐらいわかってほしい。
それは誰でも同じだよね。