気軽に喋れる男子もいたけど、オシャレ男子とはよう喋りませんでした。
かっこよくてガタイよくても中身はサル、と思ってたのもあったし（ほんとひどい）、
それより何より自分のコンプレックスが強すぎて、
なんか恥ずかしかったんだなーと今は思う。

わたしはずっと親にブスだと言われて育ったのですよね。
父にとってのわたしは、遊んでばっかで頭は悪いけど、そこそこ器量よしの娘だった。
でも母はね、近所のおばちゃんとかが褒めてくれても、ムキになって否定しました。
今思えばそれは、それは母の中にもコンプレックスがあって、
自分の娘が他人から褒められるほどの器量を持ってる訳がない、
と、自分の中で打ち消していたんだと思います。
それが語気を強めてまで否定した彼女の本音だったと思います。
とにかくうちの母は、不器用な人なんです。今ようやくわかるけど。

ちなみに小学生の頃から近所のおばちゃんたちや友だちから
渡辺満里奈さんに似ていると言われてました。
顔に肉がついたときは、自分でも割と似てる気がします。
挙式の写真とか顔まんまるで、結構似てると思う。

しかし子どもだったわたしは、母の言葉を文字通り受け止めたわけですね。
あぁ、自分はブスなんだと。恥ずかしい存在なのだと。
思い込みが激しいので、鏡を覗くたびに自分の顔が醜く見えて仕方なかったわけです。
しかも思春期は体まで悩み深く変化させます。
お肉はプリプリ、ニキビもいっぱい。
中学から高校に上がって多少は痩せたものの、周りはみんな細くてキレイな子ばかりで、
自分だけがデブでブスでしかもだらしない、と、
どんどんコンプレックスの深い闇に飲まれていったのです。
特にニキビはほんとひどかったんですよー。
まー当時は肉と野菜が食えず、白米もあまり食べれず、
魚とお菓子で生命維持をしていたような偏食大王だったので、当然と言えば当然ですが。
母は「年頃になればニキビは消えるわよ」と言っていましたが、
本人は「あたしの年頃っていつ！！！」と、もどかしさにのたうち回ってましたね。

ところが、そんだけコンプレックスを持ってるーつうのに、
わたしは自分を改善していく術を持たなかったのです。
術を持たなかったというより、改善するという知恵がなかった。おまえがサルだって感じですね。
中学からすっかり音楽にハマッてしまったので、お小遣いのほとんどは
CD、アナログ、ライヴなどに費やしてました。
音楽誌と一緒に一応、「Olive」とか「PeeWee」とか（懐かしい…）買ってたんですけど、
可愛い服にため息つきながらもバイトを親に禁止されてたので到底買えず、
ただページをめくってはドキドキワクワクしてました。
んで、女の子向けの雑誌なら当然、スキンケアとかメイクのページもあったはずなんですが…
一向に記憶にございません。
当時のわたしには、全く無縁のものだったようです。全然興味なかったみたい。
顔に死ぬほどコンプレックス持ってるくせに、なぜ改善しようと思わなかったんだろう？
やっぱサルだったみたいです。
眉毛すら整えてなかったんですよー。今の高校生からしたらありえないよね！
でもせめて眉毛くらいいじってたら、自分でももう少しマトモな顔に見えたんじゃないかと思うと、
自分のサルっぷりがこの上なく恨めしいよ…！

んでも、部活を引退したあたりからさらに肉が落ち始め、
少しずつ可愛い服にも手を出せるようになりました。
といっても、しょっぼい安もんとか古着ですけど。
うちの学校は標準服と呼ばれる制服（今の可愛い系の制服のハシリみたいなの）でも、
私服でもOKだったので、衣装代はかかったねぇ〜。
モデルの子とかZOOの弟分みたいなのが普通にいる学校だったから、
周りはみんな毎日ファッションショーですよ。
わしはビンボなのでネタにつまったらよく制服着てましたが。

そして！　ここでやっとわたしはリップなるものを塗る知恵をつけたのです！　進歩！
今調べたら、まだあるんだねーラサラってブランド。
ティーンエイジャー向けのやっすーいコスメだったけど、
ヴィジュアルイメージがすっごく可愛くて、うーん、今で例えるなら
マジョリカマジョルカくらいのインパクトあったな。あんな派手じゃなかったけど。
周りのモデルとかコギャルとかの子がお高いブランドを平気で使ってるそばで、
わたしの仲良しの普通の子たちの間では、ここのリップが流行ってました。
すっごくかーわいいピンクベージュだったよ。
まぁ、まだグロスとかない時代の話ですけどね…。

音楽が好きだったので必然的に「Cutie」とか買うようになって。
市川実和子ちゃんが大人気でした。
同い年なのに、すげー！　すげー可愛い！　って思ってました。
吉川ひなのちゃんを初めて「Cutie」で見たときは、
「この世にこんな可愛い子がいるなんて…！」と神の存在を再認識せずにはいられませんでした。

ところが市川実和子ちゃんがブレイクすると、
「ブスかわいい」とかいう言葉が流行ったんですよ。
正統派じゃなくて、個性的で可愛いって感じの顔が流行った。
そしてそれはだいたい、顔立ちの薄い子ばかりでした。
ここでもコンプレックスが噴出したね。
どー見ても、オレ流行りの顔じゃないもん。オレ、先祖は北方系だから（たぶん）。
でも流行る流行らないとかより、とにかく眉毛を整えるべきだったんでは…
この時点でもまだ、眉毛を整えるという知恵は授けられてなかったのです。
おいおい、普通最初はそこだろ…！

しかし高校を卒業し大学に入ると、一転してメイクの鬼になりました。
何がきっかけだったんだろう。
高校卒業前になると化粧品メーカーからDMとか来て、
確か母がそろそろいいだろうと、一式買ってくれたんだっけ。
それからは雑誌のメイクページを見てひたすらレッスン。とうとう眉毛も整えました。
で、化粧すればするほど、これが驚くほどに化粧映えする顔だったんだな。
無駄に顔が濃かったわけじゃなかったようです。
しかもメイクしたらきっちりクレンジングもしてたので、
ニキビもあっとゆーまになくなってすっかりキレイな肌になった。
それとも、ここが年頃だったのか？　遅かったじゃないかぁ！

そんでクマは子どもの頃からひどかったので「天然モッズメイクだ」とか言ってみたり、
メイクアップアーティストになりたいと思ったら「みんなゲイだよ」って言われて挫折したり、
髪もプラチナになったり金髪になったり、あげくカラコンとか、
アンストッパブルな勢いで派手になってゆく。なんだったんだ、あの頃は…。

その背景には、母の呪いがあったように思う。
わたしは大学入学とほぼ同時に「可愛い子」にカテゴライズされるようになったようだ。
今までまっっったくそんなことはなかったのに、大学で男の子同士に取り合いされたり、
会員2名限定のファンクラブを作ってもらったり、街で声をかけられたり、
スカウトに会うようになったり。
自分の中できれいにメイクすればまぁまぁ悪くない、とまでは思えるようになった。
しかし三つ子の魂百まで、というか呪いがとけないというか、
やっぱり鏡をじっと覗くとどうしても醜くしか見えない。
なんてひどい顔をしてるんだろう、なんてひどい顔をしてるんだろう、と何度もつぶやく。
しかしそれを口に出したらある男の人に、「嫌味っぽくてむかつく」と言われたことがあった。
彼にわたしの鏡を見せたかったよ。

そのコンプレックスの裏返しで、どんどん派手になっていったのかもしれない。
化粧し始めの頃はすっぴんで外に出るのも怖かった。コンビニ行くだけでも眉毛描いたり。

でもしかーし、やっぱり無精な性格は直りようがないので、
結局またすっぴんで会社行ったり、むしろ顔も洗わないで仕事してたり…
とかいろいろ年月を経て、
今の「メイクするときはバッチリする、しないときは絶対やってやんねー」
というスタイルを確立するのである。
メイクは好きだし楽しいけど、やっぱり素肌がラクー☆

ただ、ニキビでずっと悩まされてたおかげで、スキンケアにはもの凄く気を遣います。
上に乗せるメイク道具なんて安物でもいいけど、肌に直接触れるものに関しては、
かなり慎重になって選んでます。
しかし最近は吹き出物に悩まされてますが…それは歳だからしょうがないかねぇ。
20歳そこそこの頃は「あ、ニキビって言っちゃった！」とか言ってたくせに、
もうすっかり吹き出物って言葉を使い慣れたよ…。

---
で、最初の話に戻ります。同級生男子が苦手なのです。
大人になってメイクをするようになってから再会したら、
そこにいるのはまさに「あんた誰？」て感じみたいだから、余計にです。
だからせめて眉毛くらいいじっておけば…存在感がずいぶん違うのに…。

高校んときは見向きもされなかったのに、大人になってちょっと小綺麗になったら、
なんだかいろいろ話しかけてくる人とかいるじゃないすか。
うざっ！　です。
だから無愛想でぶっきらぼうになっちゃって、そんでさらに
「なんだ、あの女？」みたいになるわけです。

なんだでも何でもいいよ！　近寄ってこないで！

まーもう結婚しちゃったので大丈夫だとは思うけど、
当日は女子だけで集まってもぞもぞしてたいものです…切実に、頼む。

---
わたしの鏡はまだわたしの顔を醜く映します。
ブスとかってんじゃなくて、もう醜いの。不気味で気持ち悪いの。
そうなると悲しさではなくて怒りが深い深い底から沸き上がってくるもののようです。
これはとっても危険なので、あまり長い時間鏡を見ないようにしています。

でもね、こう、いい歳になってきてやっと、
自分のためにお化粧ができるようになったと思います。
ちょっと人より時間かかったかもしれないけど、わたしの顔はこれ一つだけで、
それを存分に使って可愛くできたらいいなと思う。
バッチリメイクして着飾ってパーティに行くのも、注目を浴びたいからじゃなくて。
頑張って痩せたのも、他の人と比べたいからじゃなくて。
いつでも肌をきれいにしてるのも、だいちゃんのためでもなくて。
わたしは、わたしのために可愛くありたいな、と今は思います。
そのためには、できる限りのことをやろうと思ってます。
方法は、きっといろいろあるはずなんです。